海外取引所で暗号資産を運用する場合、日本で課税されるの?

暗号資産(仮想通貨)を取り巻く環境は年々変化しています。

国内の取引所に限らず、海外の大手取引所を利用している事業者さんも多いのではないでしょうか。

「海外の取引所を使えば日本の税金は関係ないのでは?」
「海外に資産を置いている場合、日本での申告は不要なのでは?」

こうした疑問や不安の声をよく耳にします。

結論から言えば、日本に居住している限り、海外取引所で得た暗号資産の利益も日本で課税対象となります。今回はその仕組みを分かりやすく解説し、併せて事業者が気を付けるべきポイントをご紹介します。


目次

1. 日本の税制の基本ルール「居住者課税」

日本では「居住者課税」といって、日本に居住している個人や法人は、国内外を問わず全ての所得が課税対象となります。

つまり、

  • 海外の取引所で暗号資産を売買して利益を得ても
  • 海外でステーキング報酬やレンディング収益を受け取っても

日本に居住している限り、日本の税務申告が必要です。

「海外だから課税されない」という考え方は通用しません。


2. よくある誤解と落とし穴

誤解① 「海外取引所なら日本の税務署にバレない」

近年は各国間で金融情報を共有する制度(CRSやFATCA)が整備され、海外取引所の情報も税務当局に届く仕組みが拡大しています。

暗号資産も例外ではなく、国際的に取引データの共有が進んでいます。「バレないから大丈夫」ではなく「必ず把握される可能性がある」と考えるのが現実的です。

誤解② 「海外法人を作れば節税できる」

タックスヘイブンに法人を作り、そこに暗号資産を保有させれば税金を逃れられる、と考えるケースがあります。
しかし、日本の税制にはCFCルール(タックスヘイブン対策税制)があり、実態のない法人は日本で合算課税されます。

誤解③ 「海外居住すれば課税されない」

一定の要件を満たして「非居住者」になれば日本での課税対象から外れます。
しかし「住民票を抜いただけ」では足りません。生活の本拠が海外に移っているか、家族・収入源がどこにあるか、といった実態が判断されます。形式だけの移住では税務署に否認されるリスクが高いです。


3. 二重課税の問題と外国税額控除

海外取引所を利用していると、現地で課税されることもあります。

例えば、アメリカの取引所で取引を行い、現地の税法で課税された場合。
その上で日本でも課税対象になると「二重課税」となります。

この場合は、外国税額控除を活用することで、日本の税額から海外で支払った税金を差し引くことができます。

ただし、

  • 海外で課税されたことを証明する書類(課税証明書など)が必要
  • 控除できるのは「日本での税額」を上限とする

といった制約があるため、実務的な対応は簡単ではありません。


4. 帳簿・申告の実務ポイント

海外取引所を使っている事業者の悩みの多くは「帳簿付けが難しい」という点です。

ポイント① 取引履歴の保存

海外取引所では取引履歴をCSVでダウンロードできる場合が多いですが、保存期間が限られていることがあります。必ず定期的にデータを保存しておくことが大切です。

ポイント② 日本円換算

暗号資産取引はドル建てやUSDT建てで行われることが多く、日本円への換算が必要です。

  • 取引時点の為替レート
  • 取引時点の暗号資産レート

を正しく記録しないと、後から税務調査で否認されるリスクがあります。

ポイント③ 所得区分の判断

  • 個人事業として継続的に取引 → 事業所得の可能性
  • 副業的に取引している場合 → 雑所得

この区分によって税率や控除が大きく変わるため、慎重に判断する必要があります。


5. 税務調査で狙われやすいポイント

暗号資産取引に関する税務調査では、特に以下の点が注目されやすいです。

  1. 海外取引所の利用履歴を申告していない
  2. 海外ウォレットへの送金を「資産隠し」と疑われる
  3. ステーキング・レンディング報酬を計上していない

調査の際には「過去数年分をさかのぼって」指摘されることもあります。

追徴課税+延滞税で大きな負担になることも珍しくありません。


6. まとめ:海外取引所を使っても課税される。

  • 日本に居住している限り、海外取引所での暗号資産利益も日本で課税対象
  • 海外課税との二重課税は「外国税額控除」で対応可能
  • 帳簿付け、データ保存、日本円換算をしっかり行うことが重要
  • 調査リスクを避けるためにも「透明性のある申告」がベストな防衛策

暗号資産は「国境を超えやすい資産」だからこそ、国際税務の知識が不可欠です。
「海外だから大丈夫」と油断せず、しっかりと申告準備を進めましょう。


税理士からのひとこと

暗号資産×国際税務はまだ専門家も少なく、税理士業界でもニッチな分野です。
ただ、放置すれば、税務調査で大きな追徴を受けるリスクがある危険な分野です。

早めに専門家と一緒に「国際税務リスクの見える化」を行うことが、肝要です。

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